10話 さちこのペース

「あ、ここで写真撮りたい。」 

「撮るの?」 

「今嫌そうな顔したね。だってこんなに綺麗なんだよ。 

いいよ、私一人でも撮るから。」 

さちこは立ち止まってまず景色の写真を撮ろうと 

スマホをかざしていると 

彼がさちこの隣に立って屈んで顔を寄せてきた。 

「あれ画面逆だよ。」 

「う、うん。一緒に写るの?」 

「うん。」

(あれ?一緒に写るのか? 

小さい顔並べられるとちょっと困るなあ。) 

二人は写真を撮ってまた歩き出した。 

今日は当たり前のように彼から 

さちこの手を繋いでくるのが嬉しかった。 

「こないだ東京タワーで撮った写真 

まだ持ってるの?」 

「うん。」 

「何に使うの?」 

「おナニーのおかず。」 

「なるほど〜おかずか。」 

「何に使うって写真はそれしか使い道ないでしょ。笑」 

「確かに。」 

彼の杞憂はさちこの変態ぶりに屈服したようだった。 

さちこのおかずはもっぱらAV無料動画であるが、 

彼の警戒心を解くためにそう言った。 

少し進むと今度は光のお花畑のようなところに出た。 

「こっちバックで撮ろっか。」 

「うん、それがいいね。」 

狙い通り、彼はすっかりさちこに心を開いたのか 

もう写真を一緒に撮ることに拒否する素振りは 

一切見せるどころか自ら進んで 

アングルまで考えるようになっていた。 

写真を何枚か撮っていると 

彼はさちこの頬にキスしてきた。 

(恥ずかしがり屋の彼がこんな大勢のいる前で 

しかも頬にキスしている写真を私のスマホで 

撮らせるなんぞ、先程までの警戒心は 

どこに行ったんだ。笑) 

さちこは少し驚きながら喜んでいた。 

写真を撮り終わりさちこは聞いた。 

「ねえ、お口のキスはしないの?」 

「キスは恥ずかしいからここはダメ。あとでね。」 

「わかった。」 

何度か立ち止まっては写真を撮って、 

30分くらいで園内を一周歩き終えた。 

「観覧車並んでる人、さっきより減ってるか 

見に行こうよ。」 

「うん。」 

行列は先程よりも長くなっているように見えた。 

「あ、相変わらず45分待ちだね。」 

「帰ろっか。」 

「うん。」 

閉園時間までまだ十分時間は残っていたが 

執着心のない二人はなんの躊躇もなく車に戻った。 

こういうところもさちこにとっては彼の好きな 

ところであった。 

車に乗り込むと、 

彼は一度かけようとした眼鏡を外し、 

マスクを外したさちこの顔をじっと見つめてきた。 

薄暗い車内とはいえ、彼が視力が悪いとはいえ、 

若きイケメンに顔を近づけられガン見されて 

ドキドキしないはずはなかった。 

さちこも照れ笑いしながら彼を見つめ返した。 

彼がさちこの頬に手を当てた。 

「すごい好きな顔。かわいい。」 

(あれ?そんなセリフどこで学んだんだ? 

前はあれだけ私が言ってたのにそんなこと 

お世辞でも返さなかったのに。。。 

そうか、私から学んだのか。笑 

度のキツい眼鏡を外してからそう言われてもって 

引っ掛かる部分はあるが全然許す! 

むしろ眼鏡外してくれてる分ちょっと安心してるし。) 

「ありがとう。私も将生の顔大好き。」 

さちこは彼に抱きついた。 

そして二人は何度も唇を重ねたり、 

互いのおでこをくっつけながら鼻同士でキスしたり、 

いちゃついていた。 

彼は高い鼻先でさちこの小ぶりな鼻先をペンペンする。 

さちこは自分の顔の中で一番気に入っているのが 

鼻の穴の形だった。 

今までさちこの股間を味わった男たちにも

絶賛されるほどの眺めのいいこの奇跡の二等辺三角形を

形成している鼻は大抵の男に褒められる。 

だからこそさちこも他人の鼻の形を見る目は厳しい。 

特に男の鼻は竿の形と通じる部分があるので 

顔の印象を決めるのに大きなウエイトを占めている。 

さちこが彼をイケメンと思う理由はクリッとした目や 

広角の上がった歯並びのいい口元の他に 

鼻は高いが鼻の穴はそれほど大きくないところに 

魅力を感じているせいかもしれない。 

美形な鼻を持つ彼が相手の鼻の形に拘らないはずがない。 

彼とこうして縁が続いているのは 

母親譲りのこの奇跡の鼻の穴の形のおかげかもしれない 

と思っているさちこであった。 

そんな彼が愛らしく、

さちこの鼻先をペンペンする仕草は 

彼とだから成立する最高のじゃれあいで 

さちこの好物であった。 

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