1話 イケメンの扱い方
岡田将生とは前日にデートをドタキャンされて以来
お互い連絡を取り合わず、3ヶ月ほど経っていた。
それでも彼のイケメンぶりは
ブロックするには惜しい存在でそのまま放置していた。
こちらから一切連絡しようとは思っていなかったが
ある日突然彼からラインがきた。
「久しぶり。元気?連絡全然できずにごめんね。」
(やっとごめんねと言ってきたので許す。)
「久しぶり〜。元気だよ。連絡ありがとう。
将生は元気?」
「元気だよ。体調だいぶ回復しました。
また会ってもらえたりできる?」
(ようやく一周して私の良さに気づいたんだな。
そーだろ。そーだろ。
私みたいに執着しない女はええやろ。
その謙った言い方、常套手段の匂いが
プンプンするけどイケメンだから許す。)
「そっか。あれから体調戻ってなかったんだね。
もちろんまた会いたい!
ドライブしてまた夜景見たいなあ。」
(ここはまずホテルじゃない方がいいよな。
彼のエッチは教科書通りなところあるから。
ドライブデートでも楽しいし!)
「いいね!じゃあドライブ行こう!
急だけど明日か明後日はどう?」
(えらい急だな。
他の女にドタキャンでも食らったのか?)
「いいよ。じゃあ明日行こう!」
(彼の気が変わらぬうちに善は急げだな。)
「オッケー。
じゃあ仕事終わったら
家の近所までまた迎えに行くね。」
「うんありがとう。18:30ごろだよね?」
「そうそうよく覚えてたね。
スカート履いてきてくれると嬉しいな。」
「もちろん!
あれから膝丈のスカートゲットしたから履いていくよ。
楽しみにしててね。」
「楽しみ。ありがとう。
何かして欲しいことある?」
(ん?キャラ変更したのか?)
「ぎゅーとちゅー」
「わかった。」
「わーい。ありがとう。」
翌日の午後、彼からラインがきた。
「もしかしたら今日18時くらいに行けるかも。」
「オッケー。
じゃあそのつもりで行くよう準備しとく。
ありがとう。」
待ち合わせ15分前になった。
「向かってて18時くらいに着く予定だよ。」
「オッケー。こないだのところだよね。」
さちこは急いで家を出発し、
待ち合わせ場所に着いた途端、
彼からまたラインがきた。
「高速の出口で渋滞。」
「あらそうなんだ。今着いた。
こないだのところで待ってるね。」
「ごめんね。待ってて。」
「オッケー。気をつけてね。」
しばらくすると彼の車が到着した。
運転席から助手席の窓を覗き込んでにっこり笑った。
「お待たせ〜。」
「久しぶり〜。」
さちこは助手席のドアを開けて挨拶した。
「失礼します。」
コートを脱いでシートに座った。
バッグとコートを後部座席に置いた。
シートベルトを閉めるのを忘れるくらい
久しぶりの彼のイケメンぶりに見惚れていた。
「じゃあ行こうか。」
「うん。今日はどこに連れてってくれるの?」
「今日はねえ、どこか行きたいところある?」
「うーん、夜景スポットよくわかんないけど
こないだのお台場も素敵だったから
またお台場でもいいよ。
観覧車無くなるらしいし。」
「え!そうなの?」
「ってこの前美容師さんに教えてもらった。」
「ふーん。そうなんだ。無くなるんだ。」
「お台場にする?」
「東京タワーどうかなと思って。」
「東京タワーいいね。私、2歳か3歳くらいの時
家族に連れて行ってもらった以来、
上まで行ったことないから行ってみたい。」
「そうなの?」
「うん。だから幼すぎて記憶がないんだよね。
そこで似顔絵描いてもらったから
行ったってことはわかってるんだけど。」
「じゃあ東京タワー行こう。」
「やったー。」
自然と彼の左手がさちこの右手と繋がった。
彼はチラチラとさちこの膝を覗き込んでいた。
「好きだね。笑」
彼がいつでも太ももが見れるように
さちこはスカートの裾を少したくし上げた。
「寒いからタイツ履いてるけど。」
「いいね。」
「タイツいいの?生足じゃないけど。」
「いいよ。タイツ好き。」
「良かった。笑」
これまでの話をしながら東京タワー着いた。
車から降りて入り口に向かうわずかな距離で
さちこは彼の手をおねだりした。
彼はさちこの顔を覗き込んで、
ぎゅっとさちこの手を握った。
この手の位置といい、大きさといい、
なんとも居心地が良かった。
受付で最上階まで行くか尋ねられた。
「せっかくだから上まで行こうか。」
彼が高いチケット代を払ってくれた。
平日の夜ともあって客はほとんどいなかった。
まずは中間の階でエレベーターを降り、
ガイドさんに案内されながら一周した。
記念撮影をされた後、
さちこのスマホでも撮影してもらった。
彼は写真を撮られるのを嫌厭するかと思ったが
意外と好意的にカメラ撮影を受けていたことが
信頼されている気がして嬉しかった。
その後最上階のエレベーターに乗り、
彼と手を離すことなく最上階の展望フロアを一周した。

彼を後ろからハグしたり、
彼に後ろからハグされたり、
二人はまとわりつくように歩いて、
途中、ベンチがあったので座った。
「チューしたい。」
「え!ここで?」
「うん。」
「恥ずかしい。」
「だめ?」
「じゃあちょっとだけだよ。」
彼はマスクをつけたままさちこの鼻を
すりすりしていたが、
マスクをずらしてさちこに口付けした。
「ありがとう。」
それでおしまいかと思っているとそれに火がついたのか
彼は何度もマスクをずらして
さちこにキスを要求してきた。
まるで恋人同士のような甘い時間が流れた。

こんな平日の夜に東京タワーにくる中年カップルは
婚外恋愛ばかりに見えてならなかった。
カップルの男は年相応のおじさんばかり。
イケメンの彼を連れて歩いているだけで
自ずと自分の価値が上がったような錯覚に陥っていた。
さちこは8歳も年下のイケメンと
イチャイチャできる喜びを噛み締めていた。
ただ彼とのデートはいつも帰り道を入れて
3時間が限界だった。
彼は超田舎住まいで帰る時間も相当かかるからである。
シンデレラデートはあっという間に終わり
駐車場に戻った。
彼が車のルーフを開けた。
「わあすごい!
ここからも東京タワーが見れるんだね!最高!」
さちこはシートに座りながらルーフから
東京タワーの写真を撮った。
彼は車を走らせた。
<今回は彼の竿をしゃぶるまい>
そう心に決めていたさちこは
彼がもっこりしてそうだったが触ろうとしなかった。
やがて彼は我慢しきれなくなったように言った。
「大きくなってやばい。」
「大きくなってるの?いつから?」
「最初から。」
「え?会った時から?」
「うん。」
「すごい持続力だね。笑」
さちこは少し触って確かめた。
「ほんとだね。すごい濡れてる。」
(そうそう、
彼はものすごい我慢汁が出るタイプだった。)
「うん。」
「我慢できる?」
「うん。」
「じゃあ次はいっぱい舐めてあげるね。」
「うん。」
「こないださ、私、車の中で舐めたから
それ嫌だったのかなあって思って。」
「そんなことないよ。気持ちよかったよ。」
「そう?なら良かった。
あれで嫌われて
こないだドタキャンされたのかなと思って。笑」
「それは違うよ。」
「そっか。
じゃあほんとに奥さんにバレそうだったから?
もう大丈夫なの?」
「うん。大丈夫。それもあったけど
なんかいっぱいいっぱいで。」
「ふーん。」
(そっち系か。)
「私から連絡しない方がいいかと思ったから
しなかったの。」
「してくれてもいいよ。」
「でもいっぱいいっぱいだったんでしょ?
だったら連絡してもダメじゃん。」
「。。。まあそうだね。」
「やっぱ連絡待ってて正解だったね。笑」
「そだね。」
「でも連絡くれて嬉しかったよ。ありがとう。」
「うん。」
家の近所まで送ってもらって車を降りた。
健全なデートだったが心がとろけるような時間だった。
今回は彼の方から
別れのキスをしてきたことが嬉しかった。

翌朝さちこからラインした。
「将生、昨日はありがとう。
とっても楽しかった。また遊ぼーね。」
珍しく要件ではないメッセージに返信が来た。
「こちらこそ。
昨日我慢しすぎたのか、
夜たまちゃんがなんか痛かった。」
「そうなんだ。じゃあ今度ヨシヨシしてあげるね。」