4話 顔のいい男は性格もいい
彼がシャワーを出たのでさちこもシャワーした。
出てくると彼が洋服を着ていた。
「もう時間ない?今何時?」
「8時半。」
「もうそんな時間か。」
「うんパスタ食べて帰らなきゃ。」
「そっか。」
彼はスーパーで買ったパスタをレンジで温めていた。
さちこの方を先に温めてくれていることに気づいた。
「あ、あったかい。私の先に温めてくれてたんだ。」
「うん。」
「優しいね。ありがとう。」
「うん。」
「よく優しいって言われるでしょ?」
「うん、そうかなあ。」
「怒ってるイメージがないわ。怒らないでしょ?」
「うん。」
「イライラすることないの?しなさそうだね。」
「イライラはするよ。
ただそれを表には出さない。」
「そっか、さすがだね。
でも私にイライラしたら言ってね。笑」
「うん。」
「このパスタイメージと味が違う。」
「どんな味?」
「魚の味。」
「え?それきのことたらこじゃなかった?」
「うん。たらこと思ったのに。」
「あ、ホタテも入ってるからじゃない?
たらこが負けちゃったんだね。私のもそうだよ。
多分それ、これと一緒の味だよ。笑」
「そうかなあ?笑 なんか失敗だったかも。」
「でもだんだん慣れてきた。美味しいよ。笑」
「ねえ、重い女嫌いって前言ってたじゃん?」
「うん。」
「それがすごい印象的で、
どういう女が重いって思うの?
なんか私は重くない女だけど、
ライン送るのとか時間とかタイミングとか
いちいち気にしてしまうから。」
「今のところ重くないよ。」
「うん、だってちゃんと考えてるもん。
でも例えばどんなこと言われたら重く感じるとか
教えて欲しい。」
「毎日会いたい。とか」
「あー、なるほど、それは物理的に無理だね。笑」
「うん。笑 もっと会いたいとか。」
「いろんな人にそう言われるってこと?」
「前の彼女。」
「もっと会いたいって、
どれくらいのペースで会っててそう言われるの?」
「2週間に1回くらいは会ってたかな。」
「ちょうどいいじゃんね。それぐらいがいいよ。」
(なーんて言ってるけど、
確かに本命の彼にはもっと会いたいって言ってたな。
でも既婚者は現実的に無理だから
2、3人携えた方がいいってことが
よくわかったんだもんね。)
「でしょ?」
さちこはえらく物わかりのいい女を演じてしまった。
(まあ彼も既婚者であるし、
こんなイケメンと月2回やれるだけで
万々歳ではないか!)
そう思うことにした。
食べ終わったのでホテルを出ることにした。
彼がソファで少しこちらににじり寄ったのが
嬉しかった。
「忘れ物ない?」
「うん大丈夫。」
「よし行こう。」
彼は玄関に向かおうとするさちこに
両手を広げて寄ってきてハグを促した。
さちこが彼の胸に飛び込んだ。
こういう時こそ高身長の男との醍醐味である。
「今日はありがとう。楽しかった。」
「うん。楽しかった。ありがとう。また会おうね。」
「うん。」
彼が玄関の会計機に1万円札を投入した。
靴を履きながらお釣りが出るのを待っていた。
ホテルの駐車場で車に乗ろうとすると
またもや彼は助手席のドアを開けてくれた。
「ありがとう。」
彼が車に乗ってナビをセットする。
「どの辺まで送って行ったらいい?」
「〇〇線だからその沿線の駅があるところでいいよ。」
「もっと家の近くまで送って行くよ。」
「いいの?」
「うん。もちろん。最寄駅どこ?」
「△△駅」
「この辺?」
「うん。」
「よし、じゃあ出発しよう。」
「ねえ、車の中で手繋ぐのは好き?」
「うん。」
彼が手を伸ばしてきてくれた。
「ハンドル回さないといけない時は外すけどいい?」
「うん、もちろん。そしたら股間握っとくから。笑」
「どうぞご自由にしてください。笑」
「今度はもっとゆっくりしたいね。」
「そうだね。」
30分ほどで家の近所まで来た。
先週、近所に住むセフレの軽自動車で
送ってもらった道と同じ道に入ってきた。
ベンツ、若い、イケメン、高身長、
どれを取ってもセフレが彼に叶うはずはなかった。
セフレがさちこのお相手をできる
唯一のアピールポイントは
サッカーで鍛え上げた持久力と
制服姿のコスプレができることぐらいだろう。
そんなことを考えながら
近所まで来たので車を停めてもらった。
「ここで大丈夫?」
「うん、すぐそこだから大丈夫。ありがとう。」
「今日は楽しかった。ありがとう。」
「うん、楽しかったね。ありがとう。」
さちこは思わずキスを求めるように
彼に少し顔を近づけた。
彼は軽くさちこの唇に口づけした。

「気をつけて帰ってね。」
「うん。」
さちこが車を降りると
彼は助手席の窓を全開にして覗き込むように言った。
「遅いから気をつけてね。」
「うん、ありがとう。」
さちこが少し屈んで手を振ると
彼も身を乗り出して手を振った。
最後まで紳士的な態度に
さちこのテンションはマックスに上昇した。
<神様、こんな素敵な彼に出会わせてくれて
ありがとうございます。>
さちこはそう思いながら帰路についた。