8歳年下、岡田将生似の男②

2話 イケメンの口説き方

2週間後の木曜日。

さちこはバイトの仕事中もドキドキソワソワしていた。

そろそろあと1時間でバイトも終わる、

テンションが上がってきた頃、

チラッとスマホカバーを開けると

彼からのラインが目に入った。

「ごめん、今日はキャンセルさせて。」

(はあ?そうか、やっぱそういうことか。。。)

バイト中は本文を読むことができず、

もやもやしたまま仕事を終えた。

帰り道、速攻彼のラインを読むと

どうやら仕事中に倒れて気づけば病院のベッド、

今日は安静にしていなければならないから

デートは延期させてくれとのことだった。

本当かもしれないし、嘘かもしれないが、

とにかく「お大事に。」と返すしかなかった。

すると夜になって

病院から自宅に帰ったと連絡があった。

「本当に今日はごめんなさい。自分が情けないです。

ぜひもう一度挽回のチャンスをください。」

どうやら本当だったらしい。

さちこは彼の誠意に心を打たれ、

2週間後に会う約束をした。

またドタキャンでもされる可能性も考慮して、

昼間は友人達と会う約束の日にした。

2週間後、

友人と別れて電車に乗った。

スマホを見ていると車内アナウンスが流れた。

「次は終点川崎です。」

(???川崎?あれまさか!)

反対方向に乗っていた。

慌てて折り返す列車の到着時刻を調べた。

(せっかく30分待ち合わせ時間を

遅らせてもらったのに、3分遅刻するなんて!

20分前に着いてトイレで歯を磨いて

化粧直しをするはずだったのに!)

とりあえず、川崎駅のトイレに駆け込み、

折り返しの電車の発車時刻までの5分間で

身支度を整えた。

電車に乗り、彼にラインした。

「お疲れさま〜

電車反対に乗ってしまって3分遅れる予定。

ごめんね!」

白々しい嘘のような話に

彼は怒って引き返してしまわないかドキドキした。

「大丈夫。駅の改札口で待ってるね。」

朝に続き、なんとも神対応だった。

さすがは天然好きの彼である。

しかしここまで来ると

天上人に邪魔されているのではないか?!

と勘ぐりたくもなるが、

なるようにしかならないと開き直った。

満員電車の中で女性性を開花すべく瞑想をしながら

心を落ち着けていた。

ようやく駅に着いた。

「着いたよ。何改札口?」

「東口」

改札口を出てキョロキョロして

イケメンを探していると彼と目が合った。

「ごめんね〜。」

「ううん。大丈夫。逆に乗ったの?笑」

「ありがとう。

うん、今日は武蔵小杉に行ってたんだけど、

そっから川崎まで行っちゃったの。笑」

「ご飯食べる?お腹すいたよね?」

「うん。まあまあ普通。」

(この後セックスするなら感度を高めるため

空腹のがいいし。。。)

さちこは考えを巡らせていた。

「お店8時までだから時間ないから

デパ地下でお惣菜買ってどっかで食べよ。」

「うん。」

「あのさ、プランが2つあるんだけど。」

「うん。」

「Aプランは、

ドライブしてどっかに車停めてご飯食べる。」

「うん。Bは?」

「Bプランは、

どっかまったりできるところに行って、

そこでご飯食べる。

どっちがいい?」

彼は少し照れながら言った。

その表情がまた可愛らしかった。

「どっちもいいね。

ドライブもしたいし、まったりもいいね。

どっちもは難しいの?」

「うん、時間的にね。」

「じゃあ将生はどっちがいいの?」

「B。笑」

「じゃあ今日はBにしよ。

ドライブは今度連れてってね。」

「うん。」

デパ地下をウロウロするが

閉店時間まであと15分ということもあり、

惣菜のショーケースはどの店もすっからかんだった。

「お弁当とか売ってるといいんだけどね。」

「ないね。」

「向かいのデパートに行ってみようか。」

「うん。」

思わず手を繋ぎたくなる距離感にソワソワしていた。

エスカレーターに乗るたびに彼は前に出て乗る。

下りのエスカレーターでは背の高い彼と

ちょうど顔の高さが同じくらいになる。

彼は後ろを振り返りまっすぐこちらの目を見て話す。

そのまま吸い寄せられて

思わずキスしてしまいそうになる。

(手を繋ぎたい。でも最初は向こうからがいい。

しかもここは彼の行動範囲だから

手を繋ぎたくても警戒してるのかもしれないし。

とりあえずエッチしてからにしよう。)

なんとか自制心を保ちながら、彼と惣菜屋を見て回る。

「あそこにスーパーがあるから

惣菜コーナーあるんじゃない?」

「そうだね。」

その時、さちこは思い出した。

彼は白いご飯以外食べないと言っていたことを。

白米が隠れる丼物も苦手だということを。

偏食気味の彼との夕飯探しは時間がかかる。

そこで、パスタは具がかかってても食べれる

というので、パスタを選んだ。

彼は甘いマスクと裏腹に決断は早く潔かった。

次に飲み物コーナーに行った。

彼はお茶を手に取った。

「いいよ選んで。」

さちこはミネラルウォーターを持っている

と告げたが促されたので

更にミネラルウォーターを手に取り彼に渡した。

彼はさちこの選んだパスタも両手で持って

レジに並んだ。

彼のお会計はさちこが一応財布を出すという

いつもの小芝居もいらないほどのスマートさで

完璧さを感じずにはいられなかった。

デパートの駐車場に行った。

「車何色?」

「白」

「これ」

「これ?」

隣にあるワゴン車を指して尋ねた。

「違う。こっち。」

「あ、こっち?」

彼が左側に回り込んだので左ハンドルかと思って、

右に回り込もうとした。

「こっち、こっち。どうぞ。」

彼はドアを開けてくれるために

左側に立っていたのだった。

「ありがとう。お邪魔します。」

彼がドアを閉めてくれた。

明らかに右ハンドルの外車だなと、

ハンドルを見ると

ベンツのマークが目に飛び込んできた。

「これベンツなんだね。」

「うん。」

(こないだ会った時、<車何乗ってるの?>

って質問した時は

<普通のセダン車>としか言わなかったのに。

まさかレンタカーか?笑)

「綺麗だね。新しいの?」

「いや古いよ。4年くらい。

もうそろそろ買い替えようかと思ってる。」

「へえー4年で古いの?すごいね。

そうやって女も乗り換えが早いの?笑」

「そんなことないよ。」

「よく言うじゃん。

車のタイプと女の好みは似てるって。」

「じゃあこの車で女の好みはどうなの?」

「ドイツ人とか?笑」

「笑。外人はないなあ。今まで外人とは縁がないわ。」

「ふーん。そうなんだ。

万人にモテる顔してるのにね。」

「そんなことないよ。」

「100戦練磨でしょ?」

「そんなことないよ。ダメな時もある。」

「ふーん。」

「さっちゃんこそモテるでしょ?」

「いやいや、

私なんぞ将生さんの足元にも及びませんわ。」

「なに急にさん付けしてるの?笑」

「あ、失礼しました。将生様でしたね。笑」

「アプリまだ続けてるんでしょ?」

彼がさちこのプロフをチェックして

まだ登録していることを妬いているのかと

少し嬉しかった。

「見てないけどね。一応。」

「やった人いるの?」

「え?やった人?いないよ。」

「会った人は?」

「会った人はいる。

でも年齢が10歳もサバよんでて、

写真とプロフは年齢一致してるんだけど

会うと明らかに年上で

聞くとやっぱサバよんでたみたいで、

マッチング解消、みたいなのが2人ほどいた。」

「年上が好きなの?」

「ううん、特に何ってのはないけど

年が自分とまあまあ近ければいいかなって。

その人たちは同い年って書いてたから会ったけど、

結局おじさん感がすごかったから。笑

そういうのは無理かな。」

「年下が好きなの?」

「年下は経験がないからよくわからないの。

すごい年下とは付き合ったことないから

どんな感じがわからなくて手を出してない感じ。笑」

「ふーん。」

「だから将生が私でいいの?

とか思っちゃうんだけど。笑」

「え?年そんな変わらないよね?」

「うん。変わらない。」

(変わらないことにしておこう。笑)

「うん。大丈夫。」

「将生は年上が好きなの?」

「うん。大好き。」

「それはどういうところが好きなの?

包容力とか?」

「うん。俺若い子にはモテないし。

年上にはよくモテる。」

「そーなんだ。万人にモテる顔なのにね。笑」

「で、この1ヶ月将生は何人とやったの?」

「やってない。このアプリで会ってないし。」

「このアプリじゃなくて違うアプリでは?笑」

「これ系はこのアプリしかやってない。

1個で十分。メッセージの返事返すのが大変だし。

見てられないよ。」

「さすがモテ男の発言だね。

そりゃいっぱいメッセージくるんだろうね。」

そうこうしてるうちにホテルに着いた。

部屋の選択ボタンを押してエレベーターに乗った。

部屋の扉も彼がドアを開けて先に通してくれる。

レディーファーストの精神が

身についているのであろう。

「お風呂入れよっか?」

「俺はシャワーでもいいよ。

お風呂入りたかったらいいよ。」

「うん。」

風呂場で蛇口をセットして出てくると

彼はベッドに腰掛けた。

隣に座ると彼は肩に手を回し、抱きついてきた。

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