7話 あの竿にもう一度会いたくて

15分前に駅に着くように家を出て電車に乗っていると 

<10分から15分くらい遅れる。ゆっくり来て> 

とラインがきた。 

さちこが家から1時間以上かかることを

忘れているのか知らないが、

そんなことを30分前に言われても 

どうしようもなかった。 

中途半端な遅刻は時間が有効的に使えないし 

だったら1時間遅れてくれる方が良かった。 

<やっぱり帰ります>って言えるから。 

待ち合わせ場所は

前回も同じく日差しが強く暑かったので、 

外で待つのは避けたかった。 

とはいえ、カフェに入っているほどの時間もないし、 

今回は駅の商業施設のベンチに座って時間を潰した。 

そろそろ時間かと待ち合わせ場所の 

タクシー乗り場のロータリーで待っていると 

70歳前後と見られる一人の男性が声をかけてきた。 

「〇〇さんによく似てると思ったら違ったわ。」 

「あーそうですか。」 

「〇〇さんによく似てるね?」 

「え?誰ですか?それ?知らないです。」 

「知らない?テレビによく出てる。。。」 

「あんまりテレビ見ないんで。」 

(っていうか、前もバスに乗ってたら 

おっさんに同じこと言われたなあ。笑) 

「結婚してるの?」 

「はい。」 

「旦那おるの?」 

「はい。」 

「働いてるの?専業主婦?」 

「働いてます。」 

「ふーん。えらいなあ。」 

(何なんだ?この会話。笑) 

するとやっと男の背後から彼の車が到着したのが見えた。 

「じゃあ、私待ち合わせしてますんで。」 

「あ、そう。友達?」 

「はい。失礼します。」 

足早に車に駆け寄って乗り込んだ。 

彼のテンションは明らかに前回とは異なっていた。 

さちこが助手席のドアを覗き込んでも 

こちらを見向きもせずスマホを見ている彼に 

テンションが下がった。 

ドアを開けて乗り込んでも 

<お待たせ〜>や<久しぶり〜>的な 

態度を見せることなく 

家族の迎えに付き合わされてような 

テンションにさちこはイラッとした。 

しかも2回もドタキャンして、今日も遅れてきて 

謝罪の言葉も態度も一切ないことに 

もやもやしていた。 

嫌味の一言でも言わなきゃ気が済まなくなり 

何かの拍子で言った。 

「まあ今日もキャンセルされたら 

もうブロックしようと思ってたけどね。」 

「え?そうなの?」 

「そりゃそうでしょ。だって3回も断られたら 

もう縁がないとしか思えないよね。」 

「そっか。」 

「自分が逆の立場だったらどう?そうするでしょ?」 

「そうだね。ブロックする。」 

「そういうことだよ。 

もう笹舟に乗せられたと思ってたから。笑」 

「そんなことないよ。」 

彼はさちこの手を握り、手の甲にキスをした。 

大抵、車という密室の中で手を握られて

キスされれば性欲の強いさちこなら

少しは胸がキュンとなったりしそうなものだが 

彼に対して全くそう感じないどころか 

嬉しくないとここまではっきり自覚できたことに 

さちこは内心驚いていた。 

(こんなに気持ちが冷めていても 

あの竿をぶち込まれたら

やっぱり回復するのだろうか。。。) 

「もう他にいい人できたのかと思ってた。 

ラインもピタッと来なくなったし、 

こちらが送ってもテンション低そうだったし。」 

「あー、それはちょっと仕事バタバタしてて。」 

「ふーん。」 

「じゃああれから他の人に会ったりしてないの?」 

「会ってない。あ、でも元カノと会った。」 

「へえ。より戻さなかったの?」 

「実は別れてからも年1回くらいは会ってたの。 

もう一人男友達と3人で元々仲良くて

ゴルフ行ってたから 

年一回くらいはそれで会ってその後飯食って 

何もなく解散してたんだけど、 

こないだ二人で会おうって言ってきて。」 

「ほー。向こうはまだ好きなんじゃないの?」 

「そうかなあ。」 

「なんで別れたの?」 

「向こうが結婚したから。」 

「なるほど。」 

「で、子供も産んだところだし、

そんな女とより戻せないよ。」 

「なんで?」 

「これから子育てとか大変でしょ? 

俺なんかと遊んでる場合じゃないでしょ。」 

「ふーん。」 

「で、こないだ連絡あったけど重いから断った。」

「ふーん。」 

「さっちゃんは他の男に会った?」 

「会ったよ。」 

「え!会ったの?」 

「そりゃ会うでしょ。だって1ヶ月も音沙汰なかったし 

もう笹舟に乗せられてると思ったし。」 

「そっか、まあそれは仕方ないね。 

許す。」 

(は?今小さな声で<許す>って言ったよな? 

なんでお前の許可得なきゃいけねえんだ? 

彼氏でもないくせに。) 

「で、どうだった?」 

「別にいい出会いではなかったから。」 

「そっか。だよね。あのサイトって女が 

すげえ高飛車な奴多いよね。」 

「そう?」 

(お前もその部類だと思うけど。) 

「だって急にメッセージ返事来なくなったりするし。」 

(それはお前の会話力に問題があるからだろ?) 

「それはメッセージの内容にもよるんじゃない?」 

「まあ確かに、俺は文章打つの苦手なの。」 

「そうだね。ライン、ほぼ写真とスタンプだもんね。」 

「そう、俺会話できないの。 

だからとりあえず会って会話したいんだけど 

そこに行き着くまでにメッセージしなきゃいけないから 

会えないの。」 

(おめえも新規探してたんじゃねえか。 

よくさっき私に向かって<許す>って言えたもんだな。) 

「まあそりゃ会うまでにメッセージで 

会ってみたくなるか決まるもんね。」 

「だいたいさ、

あのサイト男女比率が偏りすぎなんだよ。」 

「確かに男は女の2倍いるもんね。」 

「だから女は高飛車になるんだよ。」 

「そうかなあ。でもクソみたいな男も多いよ。」 

「いや、絶対あれは女が引く手数多だから 

女が調子に乗るんだよ。」 

(なんで彼の顔がタイプでないのかわかった気がする。 

僻み根性が顔に出てるんだよ。) 

駐車場に車を停めて 

彼が探してくれたランチの店の前まで 

歩いて行くと閉店していた。 

(だよな。こんなもんだよな。 

もう彼とデートすんなってことなんだよ。) 

さちこは不思議と店が閉店していたことに納得した。 

地図アプリでもう一軒候補の店に電話しても 

繋がらなかった。 

仕方ないのでホテルのレストランで 

昼食をとることにした。 

彼は定食とノンアルコールビールを注文した。 

店員がさちこにも飲み物を促して聞いた。 

「じゃあ私、レモネードください。」 

「え?飲むの?」 

「うん。」 

彼は少し驚いた様子でさちこにボソッと聞いた。 

(え?お前もドリンク注文したのに 

私には水で我慢しとけって言うの? 

こんな遠いとこまで来てやってんのに。 

しかもお前は遅刻してきたくせに。) 

こんな男と今からセックスするのはどうなんだろうか 

そんな風にも思ったが 

4日前に会った手マンが下手くそな男との 

セックスのお口直しはしたかったので 

ランチを食べ終わり部屋に行った。

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