2話 すぐバレる嘘をつく男
彼の顔は剥け顔とは断言できる顔つきではなかった。
しかも聞けば姉がいるだけの長男坊。
絶望的だった。
しかしせっかくここまでしもい話をしているわけだし、
一か八か聞いてみた。
「大竹さんって火星人ですか?」
「火星人?」
「仮性包茎ですか?」
「違います。」
「全剥けですか?」
「はい。」
「そうでしたか。私、火星人の方はNGなんで。」
「なんで?」
「理由は2つあって。
衛生面と性に対する興味がないから
私とは合わないかと思うんで。」
「なるほど。」
「大きさはどうですか?
長くて硬そうなイメージですけど?」
「いや〜。そんな自信ないです。
大きいのが好きなんですか?」
「私は狭いので太くなくていいんですが、
硬さと長さは重要だと思っています。」
「そうなんですか。」
「復活力はどうですか?」
「いや〜そんな自信ないです。」
「え?ないんですか?一日何回します?」
「何回って1回でしょ?何回するの?」
「3回して欲しいですが、まあ最低2回はないと。。。」
「え〜そんな人いるの?何時間で?」
「49歳の方で2時間半で3回いかれた方いましたよ。」
「嘘〜それは特別だよ〜。」
「でも大抵2回は皆さんいかれますよ。」
「ええ〜じゃあ時間ちょうだい。
5時間くらいホテルで籠ってたらいけるかも。」
「逆に今まで求められなかったんですか?」
「そんなの言われたことない。」
「へええええ。」
(どんなくだらんセックスするんだろうか。。。
ちょっとテンション下がるなあ。)
「今からじゃあ試してみる?」
「私、初めて会った人とはしない主義なんで。」
「そうなの?」
「しかもラブホテルは嫌なんで。
ちゃんとした綺麗なホテルでしたいです。」
「わかった。じゃあ次のデートはホテルでしよう。」
「で、アピールポイントはなんなんですか?」
「長い方かなあ。」
「何センチですか?」
「測ったことないからわからない。」
「じゃあどれくらい?これくらい?」

「これくらいはある。」
彼は机にあった
2本あるうちの1本のマドラーを手に取って言った。
「え?こんなに長いの?」
「うん。これぐらいはあるよ。
こっちほどはないけどね。」
「そっちは外人並みだわ。
でも日本人で
こんなに長いのはちょっと興味出てきた。笑」
「そう?よかった。」
「自主練はしてますか?」
「うーん。ときどきするかなあ。」
「じゃあ今度会う時まで毎日してくださいね。笑」
「毎日は無理だよ。でも3日に1回ぐらいはする。」
「了解です。」
3時間ほどほぼしもい話をして終わった。
店を出ると彼が手を繋いできた。

「手の感触が合うかみときたくて。」
「どうですか?」
「合う!」
「それはよかったです。」
駅に着いた。
「私、今日は寄るとこあるんでここで。」
「あ、そう。じゃあまたね。」
「はい。ごちそうさまでした。じゃあまた〜。」
久しぶりに男を見送る気になった。
彼のスタイルの良さに惚れ惚れした。
別れてからラインのやり取りが頻繁になった。
彼のラインはなにしろ母性本能をくすぐられるほどの
可愛いスタンプ使いだった。
数日後、彼のアイコンがフルネームから
苗字だけに変更されていた。
「あれ?アイコン名、名字だけになってる。怪しい。笑」
「会社の人とグループライン作ったら、
本名検索されていじられたから
めんどくさくなって消したの。
怪しくないよ。」
名前を検索してヒットするって何者なんだろ?
俄然興味が出て、さちこも彼の名前をググってみると
なんと彼の個人情報がダダ漏れであった。
生年月日、身長、体重、血液型、
ただ一つ西暦に目を疑った。
「そうなんだ。っていうか、50歳なの?」
既読がついてしばらく時間が経った。
彼はなんと返信するか
考えあぐねているに違いなかった。
「そうなの。ごめんね。嫌いになった?
心も体も40代と思ってるから。」
(いやいやいやいやいや、
私、こないだ会った時、年齢詐称の話したよなあ?
なんであの時カミングアウトせんかったんや?)
彼の何もかもが信用できなくなった。
しかも3歳とはいえ、男の47歳と50歳の差は大きい。
なぜなら50歳になると
格段と竿の硬度が落ちる人が多いからである。
「嫌いじゃないけど、まだ嘘ついてることなあい?」
「もうない。」
「承知しました。」
完全にここからさちこがマウントを取るようになった。
彼のラインはさちこを逃すまいという意思が
ありありと伝わってきた。
それまでさちこは彼になら本気になれるかも
と思いかけていた矢先のことですごく凹んだ。