最終話 突然の別れ
彼から東京の自宅に戻ったとラインがきた。
しばらくやりとりし、週末会う約束をした。
「ところで嫁としたの?」
それまでテンポよく続いたラリーが一瞬滞った。
その間で察しがついた。
さちこは洗面所にスマホを持ち込み、
歯を磨きながらちらちらスマホの画面を
チェックし返信を待っていると
「した。」
と文字が現れた。
未読のまま、うがいしながらなんと返すか考えた。
「わかった。正直に教えてくれてありがとう。
週末はキャンセルでお願いします。」
「わかりました。」
これが彼との最後だった。

<嫁とセックスする男とは婚外恋愛はしない。
なぜなら彼とのセックスで
嫁のエネルギーをもらってしまうから。>
これがさちこの持論であり、ルールである。
彼は元々帰省した時は
嫁とセックスすると言っていたから、
いずれはするであろうとわかっていた。
その日は予想より早く来たが、
それだけ縁が薄かったということであろう。
せっかく気持ちが入りかけてきた頃で、
ショックではあったが、所詮は婚外恋愛。
いつか別れは来るのだから執着しても仕方ない。
彼には色々気持ちよくさせてもらって感謝している。
また彼と出会うことによって、
<甲斐性のない男は嫌だ>
ということがはっきりわかった。
ふとし君、ありがとう。
君に幸あれ。